空間 先生今日は。先生のお宅は大学から結構遠くて,すっかりご無沙汰しました。その後いかがですか?
先生 この奈良市にもプロバイダーがいろいろ開店して,WWW Telnet Fetch が使えるようになったよ。
空間 大学にいらっしゃったときは,ぼくが全部設定してあげたと思いますが,大丈夫かな?
先生 NTTのテレホーダイを使うために夜の11時からとなるけど,今夜はつきあってもらって,整備の具合を見てもらうことにするかな。
空間 いいですよ。奥様のお手料理を楽しみに来たのですから。その前に,TSPACEの質問をいろいろしますから,お願いします。
先生 いいですよ。読者の方から質問がさっとうするかと思っていたのだが,案外少ないので拍子抜けと感じていたところだから。
ディラック指標
空間 2章の最後のディラック指標のところですが,指標というのですから,次の章の既約表現のところで出てくる表現の指標と何か関係があるのでしょうね?それなら表現空間があるはずですが,それはどんなものですか?
先生 ここのところは,次の章の準備になっているから当然表現と関係があるが,表現の概念を導入する前の記述だから,表現空間を考えていない。ところでP35の頭で表現の指標を定義したときに,指標は座標系の取り方によらないと書いてあるが,実は座標系どころか表現空間にもよらないことに気がついたかい?
空間 待ってくださいよ。指標というのは行列表現の対角和のことですよね。しかし結果的にはそれを作った表現空間からは独立してしまうということですか?
先生 3章の本文では波動関数の空間とか,格子振動とか,たて数行列のベクトルとかを,紹介しているが,表現の指標はその具体的な内容に関係しなくなることを,認識してディラック指標の記述を読んでみてくれませんか。
空間 2章で点群が例に使われて,群の元の間の積はその操作を続けることだと分かるのすが,それの定数倍とか,和とかはどんな操作に対応するのかまったくイメージがつかめないので困っていたのですよ。
先生 数学の概念は,何か具体的なことと結び付けると理解しやすいが,一度定義されてしまうと,そこから離れて一人歩きするからわれわれには困ることが多いのだよ。
空間 ディラック指標の場合は3章の表現の指標が,表現空間から独立することを先取りして抽象的な記述になっているが,3章の波動関数の空間での表現 Oαのことだとイメージを持てばよいのですね。
先生 P38の(3.19)の下に君が今言ったことが書いてあるよ。演算子というのは,ベクトル空間のベクトルに作用するものだが,ベクトルの具体的な内容によらない性質はベクトル空間を離れて議論できる。
空間 どれどれ,たしかに書いてありますね。ところでその次のページの(3.23)は右辺にnλ が抜けていますね?
先生 そのとおりだよ。他にもミスプリントが20箇所ほど見つかっているが,正誤表を作って,皆さんにくばらないといけないと思っているのだがなかなかできなくて困っているところだよ。
1996/05/03