kの星の状態
空間 今少しバンド計算をやっているのですが,このごろバンド計算に空間群を使わない人が多くなりましたね。
先生 そうだね。むしろほとんど使われないといったほうがよいだろうね。計算機が速く大容量になって,対称化をするとかえって遅くなるし,空間群を使うのにはそれなりの勉強も必要だしと,まーいろいろ理由はあるがね。しかしバンドの各ブランチがどんな対称性を持っているかは貴重な情報だから,面倒でも使ったほうがよいと思うよ。
空間 そうなればこの本ももっと売れるでしょうからね。私はもちろん対称化のお世話になっています。そこで一つ問題が出てきました。バンド計算は普通TSKPGNのような機能を使って,星で結び付くkの一つを選んで実行しますよね。ところでこのkの星のkを持つ点ではエネルギーとか原子の位置での角運動量成分の量とかは計算した点と同じですが,波動関数の位相が関係するような量に関しては同じではありませんよね。
先生 その通りだよ。もっとも位相というのは本来相対的なものだから異なるkの間の状態で何かの量の行列要素を計算するときにだけ,気をつけないといけないことになる。君は全部のkでバンド計算をやっているのかい。
空間 そんなことはしませんよ。空間群を使えば,何とかなると思って相談にきたのですよ。大体のことはTSPWAMとTSLCLAの中にある。射影演算子を使っているところをまねすればと分かるので自分で作ってみました。平面波はそっくりまねで問題がありませんが,球関数で表わされているところが分かりません。
先生 平面波はそっくりまねと言っても,平面波をしまっているCOMMON/SPW/をそれぞれのkで作らないといけないだろう。球関数の部分はTSLCLAが立方調和関数を使っているのに,君のバンド計算のプログラムは球関数をそのまま使っているから,困ると言うことだね。
空間 そうなんですよ。おそらく少し面倒でもTSTRLMを使って一度立方調和関数にしてTSLCLAのまねをして射影したあとで,もう一度もどすというのが手近な方法ですよね。
先生 それが良さそうだね。もう一つはEULERCがオイラー角をあたえるので,TSRMIで回転群の表現行列を作ってから射影するというのがあるが,こちらは今度の本で説明を省略した回転群の勉強をしてからということになる。
空間 どれどれ,あっP252の表題がまちがっていますよ。このTSIRMIの三番目のIは余分ですよ。
先生 ここに球関数を点群の操作で回転するサブルーチンTRSHHMが作ってあるから持っていってもいいよ。
1996/05/03